親知らずと顎の骨折リスク<日本口腔外科学会総会 発表>
私は2006年に、**「スポーツによる顎顔面骨骨折」**というテーマで、日本口腔外科学会総会にて研究発表を行いました。日本口腔外科学会総会は、口腔外科分野において年1回開催される大きな学会です。
この研究では、過去10年間の症例をもとに、スポーツ外傷による顎や顔面の骨折について検討しました。その中で、下顎の奥に親知らず、特に埋まっている親知らずが存在する場合、外傷時に下顎角部と呼ばれる顎の奥の部分に骨折が起こりやすくなる可能性が示されました。
親知らずは、痛みや腫れが出てから受診される方が多い歯です。
しかし実際には、痛みがない状態でも、将来的なトラブルの原因になっていることがあります。
特に注意が必要なのは、横向きや斜め向きに埋まっている親知らずです。
このような親知らずは、歯ぐきの腫れ、虫歯、口臭、手前の歯への悪影響だけでなく、顎に強い力が加わった際のリスクにも関係することがあります。
親知らずと顎の骨折リスクについて
下顎の奥に埋まっている親知らずは、顎の骨の中で弱点になりやすいと考えられています。
スポーツ中の接触、転倒、事故などで顎に強い衝撃が加わった場合、親知らずのある下顎角部に骨折が起こることがあります。
実際に、スポーツや殴打による下顎骨骨折を検討した報告では、14例中12例、85.7%が2カ所の骨折であり、下顎角部の骨折があった10例すべてで埋伏智歯、つまり埋まった親知らずが確認されています。
これは「親知らずがある人は必ず骨折する」という意味ではありません。
ただし、親知らずの位置や向きによっては、外から強い力が加わったときに、顎の骨折リスクに関係する可能性があります。
スポーツをしている方は特に注意が必要です
ラグビー、サッカー、バスケットボール、格闘技、柔道、野球など、接触や転倒の可能性があるスポーツをしている方は、親知らずの状態を一度確認しておくことをおすすめします。
試合中や練習中に顎へ強い衝撃を受けた場合、親知らずがある部位に負担がかかることがあります。
特に、下顎の奥に深く埋まっている親知らずや、横向きに生えている親知らずは、早めに抜歯を検討した方がよいケースがあります。
また、スポーツをしていない方でも、転倒や事故で顎をぶつける可能性はあります。
「痛くないから大丈夫」と判断せず、親知らずの位置や向きを確認しておくことが大切です。
抜かなくてもよい親知らずもあります
親知らずは、すべて抜歯が必要というわけではありません。
まっすぐ生えている、しっかり清掃できる、虫歯や歯周病の原因になっていない、手前の歯を押していない。
このような状態であれば、抜かずに経過観察できる場合もあります。
一方で、以下のような親知らずは、抜歯を検討することが多くなります。
| 状態 | 考えられるリスク |
|---|---|
| 横向き・斜め向きに埋まっている | 手前の歯を押す、炎症を起こす |
| 歯ぐきが何度も腫れる | 智歯周囲炎を繰り返す |
| 清掃しにくい | 虫歯・口臭・歯周病の原因になる |
| 手前の歯に接している | 第二大臼歯の虫歯や歯根吸収につながることがある |
| 下顎の奥に深く埋まっている | 外傷時のリスク要因になる可能性がある |
抜歯するかどうかは、レントゲン・CTで判断します
親知らずを抜くべきかどうかは、見た目だけでは判断できません。
歯ぐきの中や骨の中に埋まっている親知らずは、レントゲンやCTで確認する必要があります。
当院では、親知らずの向き、深さ、神経との距離、手前の歯への影響、周囲の骨の状態を確認したうえで、抜歯が必要かどうかを判断します。
「抜いた方がよい親知らず」なのか、
「今すぐ抜かずに経過観察でよい親知らず」なのか、
患者様ごとに状態を確認し、できるだけわかりやすくご説明します。
親知らずを放置する前に、一度ご相談ください
親知らずは、痛みが出てから慌てて抜歯するよりも、状態を確認したうえで計画的に対応した方がよい場合があります。
特に、スポーツをされている方、横向きの親知らずがあると言われた方、過去に何度も腫れたことがある方、抜歯するか迷っている方は、一度ご相談ください。
親知らずの状態を確認し、抜歯が必要かどうか、抜歯する場合のリスクや流れについて丁寧にご説明します。